親と絶縁する

という言葉を聞いて、どう感じるでしょうか?
以前の私は、この言葉を聞くととてもザワザワして仕方がありませんでした。
親と縁を切るなんて、なんて残酷なんだろう
親を悲しませてしまうなんて、私ダメだな
親なのに優しくできないなんて、なんて冷たいんだろう
そんなことを思って、いろんな言葉を自分に浴びせてきたように感じます。
「親と絶縁する」
ちょっと強めのキーワードですが、私の人生が変わっていったのは、「親と縁を絶つ」ということを決めてからです。
自分と向き合い、自分の本音をしっかり聞くようになった頃、
「親から離れて、自分の思うように生きてみたい」と思うようになりました。
きっと、本来は思春期にそんなことを思って親から離れ、自立していく過程があるのですが、私にその機会が訪れたのは30歳を超えてから。
それまで、親との関係なんてなんの問題もないと思っていました。
結婚してから、同じような問題でいつもパートナーとぶつかるようになり、
思い起こせば私は「自分の人生に、生きるということに安心したことなんてない」ということに気がついたのも30歳オーバーした頃。
何をしても埋まらず、どこかいつも寂しい。
その理由に気づくまで、随分と長い時間を要しました。
いろいろな出来事を経験して、
「私は今まで、全く自分を生きていなかった」
ということに気がつき、私は親との縁を絶つことを決めました。
私が地元を出ていくことに、もちろん両親は大反対。
母親に泣かれてしまい、私はその時もとても悲しかったし、何度も揺さぶられました。
こんなこと、してはいけないのでは?
親をこんなに悲しませるなんて、本当に良いのだろうか?
そう思いながら、本当に「断腸の思い」で地元を離れ、親との距離感を持つことになりました。
はじめのうちは「私は自分を大切にする」と決めた決意で進んでいきましたが、時にはまた不安になり、「私って本当に親不孝な娘だな…」と自分を責めて悲しくなることも。
今までずっと、
親の期待通りに、パートナーの期待通りに、周囲の期待通りに。
そうやって生きることがデフォルトだった私は、すっかり自分の本当の声なんて拾えなくなっていたので、どうやって生きたら良いのかわからなかったり、いつも「こんなことしていたら怒られちゃう」とばかり考えて怯えていました。
「誰に?誰に怒られちゃうの?」と丁寧に自己対話を繰り返していった先に、
「お母さんに怒られちゃう…」と悲しくなって涙を流したときに、私は初めて自分がどれだけ母からの愛を渇望していたのかに気付かされました。
行動や言動の全てが、「母に怒られないように」だったのです。
(のちに妹も同じことに気づいていました)
親から離れてしばらくは、自分で選択しても「これでいいのかな?」と誰かに聞きたくなりました。
「怒られるんじゃないかな?」という怯えるような自分とも、何度も何度も対話しました。
「縁を絶つ」という覚悟で、親から自分を切り離して自分の人生を生きようと生き始めたわけですが、何年も経った今、親と縁が切れているか?と言われればそうではありません。
前よりもずっと、心地良い距離で縁が結ばれているのを感じます。
あんなに、私のすることに否定的だったのに、
今では私の決めたことを尊重してくれて「いつでも帰っておいで」と言ってくれるようになりました。
「誰かの人生を生きている」ということに気がついた時、その背景には親との関係が密接に関連しています。
パートナーとの関係性に悩むときも、子どもとの関係に悩むときも。
いつでも「親との間で形成された考え方や行動パターン」が反映しているものです。
「親と絶縁する」ということの意味は、縁を切るという意味ではなく、
絡まったり、捻れたり、切れそうになったり、ボロボロになったりしている縁を綺麗に直していくようなものです。
親のせいにしたり
パートナーのせいにしたり
誰かのせいにしたり。
そうやって生きることもできるけれど、やっぱり、もっと楽に生きたい。
自分の人生に、もっと安心して身を委ねられるようになりたい。
そう思って、今まで聞いてこられなかったたくさんの自分の思いを受け止めました。
親とのこと、パートナーとのこと、家族とのこと。
大概は、ちゃんと自分の気持ちを受け止めてあげることで安心感は育ちます。
誰かを悲しませないように…と生きることは悪いことではありません。
でも、あなたが悲しんでいるのだとしたら、それも「誰か」の悲しみなのです。
自分の悲しみをわかってあげられるのは、自分だけ。
自分を笑顔にしてあげられるのも、安心させてあげられるのも、
本当の意味では自分だけ。
あの時、「親から離れる」と決めて本当に良かった。
あの選択がなかったら、私はきっと今も、親のせい、パートナーのせいと、悩みを繰り返していたことでしょう。
一度離れて、自分自身とまた縁を結び直せてよかった。
自分自身と縁を結び直してから、人間関係・お金・恋愛などあらゆる悩みから解放されました。
そして、身近な人たちとの関係性はずっとずっと心地よく快適なものになりました。
幼少期の経験などから、強固に親との関係性に固着があり、大人になってもいろいろなことに問題が生じたりしている人もいると思います。
親と向き合う、パートナーと向き合うのではなく、
その全ては、自分自身と深く丁寧に対話することで解いていくことができます。
「親と絶縁する」というハードな印象の言葉の先にあったものは、自分自身と繋がっているという安心感です。
それは、私が何を手にしても、どんなに頑張っても得られなかったもの。
もし、同じように、生きることに「安心感」や「幸福感」が伴わないという人がいるのなら、
それは「不幸」なのではなく、自分自身と縁を結び直すチャンスです。
繰り返す悩みは、必ず解くことができますよ。
あなたが、たった1人の自分をおおらかな心で受け入れ、愛することができますように。
